胸式呼吸も大事
呼吸法はいろいろな流派あるようだが、腹式呼吸を提唱している多くは白隱禅師の「内観の法」にヒントを得ているのだと私は勝手に思っている。(内観の法は気を丹田に置くこと)
ところで、
肺に空気が送られなければ人間は死んでしまう。
肺、つまり胸でしっかり呼吸の出来ないものが、
いくら腹式だ、気海・丹田だといっても的外れだ。
しかし、胸でするあたりまえの呼吸が出来ていない人が甚だ多い。
現代人の労働環境といえば、長時間座ったままで、
女性はブラジャーで呼吸筋を締め付け、
男性はネクタイで呼吸補助筋を圧迫し、
姿勢は前屈みになって胸を締め付けて作業・仕事をしている。
これで満足な呼吸が出来ているはずがない。
作業の内容や集中度によっては無意識に息を止めている。
ときに集中力は途切れ、脳が疲れ、逃避が起こりボーッとして眠くなる。
集中力、作業能力が低下する。
ストレスの度合いによっても呼吸は小さくなる。
平常時でもまともに呼吸をしていないことが度々ある。
腹で呼吸をと考える前に、胸でちゃんと呼吸する癖をつけることだ。
白隱禅師はお坊さん。
坊さんは経を読むのが商売である。
胸の呼吸がしっかり出来ている人でなければ長息で経など読めるものではない。
ヘボい坊さんの息つぎだらけのお経で、どうやって成仏出来るというのだ。
もともと坊さんは胸での呼吸が出来ていた。
長い息でお経を詠むから坊主は長生きという説もある。
出来ている坊さんに対してなら丹田呼吸などは効果があるのかもしれない。
呼吸法は江戸時代からおこなわれていたようだが、
そのころの仕事の多くが肉体労働である。
呼吸がしっかりしていなければ直ぐにバテてしまう。
職人の作業は呼吸が合わないとあぶないものも多い。
いまよりずっと呼吸を大切にしていたはずだ。
職人でなくても、少なくとも今よりはゆったりした生活をしていただろう。
また、歩く距離にしても今とは格段の差だったはず。
現代人とは呼吸が違う。
ちゃんと呼吸が出来ていた人々の病気を肚の呼吸で治していたのではないだろうか。
それに、今とは吸っている空気の質が違う。
普通の「胸の呼吸」が出来ないのが現代人である。
治療には呼吸筋を緩めるツボを使っている。
加えて、口呼吸の人が多いので扁桃の弱体化を改善するツボを使う。
胸の呼吸が弱い人に対して、これをするとしないでは治療の効きが違う。
以前は扁桃だけで十分な効果を得たが、最近は足りない。
ストレスが呼吸を小さくしてしまう。
小さい呼吸の癖をつける。
胸(呼吸筋)を開くツボに鍼をし、呼吸の指導をすると息苦しさがとれると喜ばれる。
これだけで様々な症状がとれたりもする。
空気は無料なので、たいへん安上がりな治療法である。