鍼灸の刺激量
ある講習会の休憩時間、数人の先生が、痛みで肩の挙らないという、新米の若い先生を「生け贄」にして、習ったばかりの治療法を試していた。
30分の時間をフルに使っても、痛みに変化はなかった。
そこで次の休み時間、その生け贄にふたたびモデルになってもらい、彼らが使ったツボと同じツボに、持っていたボールペンの頭の部分で軽く30秒くらい刺激を入れた。
すると、痛みもなく肩はスッと挙がる。先ほど必死で処置をしていた先生たちから「えっ?」と声が上がった。
自慢話?いえいえ、そうではなくて、つまり、刺激量が合っていないと体は刺激を受け入れない、ということを言いたいのだ。
刺激量が合っていれば、ボールペンの頭でも効くのだから…
正確にツボを取ることはもちろんだが、刺激量をその人の体質に合わせないと治療は効きにくい。
ところが、この刺激量をわかっていない鍼灸師がけっこう多い。
多くの鍼灸師を見て来て、
「下手な鍼灸師ほど刺激は強い傾向にある」と私は感じている。
鍼灸を理解していない鍼灸師は意味なく刺激が強くなる、
意味なくハリの本数が増える。
良い音はウルサくない。
良いニオイはキツくない。
良い味は濃くない。
良い景色は明るすぎて見えず、暗すぎても見えない。
良い刺激は痛くない。
でしょう?
五感に与える刺激がアンバランス、
例えば香水のキツい人がいつもそばにいるとか… は、
体調を崩す要因にもなる。
我々鍼灸師が患者さんの体に与える刺激も細心の注意を払う必要がある。